2026年8月23日

夏になると、下痢や嘔吐で受診される方は実際に増えてきます。
当院で診ている印象では、水のような下痢や嘔吐が中心で、血便まで出ている方はそれほど多くありません。
「下痢が何回出たら病院に行った方がいいですか?」と聞かれることがありますが、私がまず確認しているのは、水分が取れているかどうかです。
下痢の回数ももちろん参考にはします。ただ、回数だけで受診の必要性が決まるわけではありません。
水分を飲めているか。飲んでも吐いてしまわないか。尿は出ているか。ぐったりしていないか。
まずはこのあたりを見ています。
福岡県では、食中毒が多くなる8月を「福岡県食品衛生月間」として、カンピロバクターなどによる食中毒への注意を呼びかけています。
水分が取れているなら、慌てなくてもよいこともあります
急に下痢が始まっても、水分が飲めていて、腹痛がそれほど強くなく、全身状態も悪くなければ、自宅で様子を見られることは少なくありません。
食欲がないときは、無理に食べることよりも水分を確保することを優先してください。
一度にたくさん飲むと吐いてしまうこともあるので、少量ずつ飲む方がよいでしょう。
受診を考えたいサイン
- 水分を飲んでも吐いてしまう
- ほとんど飲めない
- 尿がかなり少なくなった
- 立つとふらつく
- ぐったりしている
こうした状態なら、下痢の回数がそれほど多くなくても受診を考えます。
急性の下痢では、原因を最初から完全に突き止めることよりも、まず脱水の程度や全身状態を見ることが大切です。
「昨日食べたものが原因ですか?」と聞かれることがあります
下痢で受診された方から、直前に食べたものを原因として挙げられることはよくあります。
「昨日食べたパンが悪かったんでしょうか」
「昼に食べたうどんが原因ですか」
といった具合です。
もちろん直前の食事が原因のこともありますが、食中毒は食べてすぐ症状が出るものばかりではありません。
例えばカンピロバクターでは、食べてから症状が出るまで一般に1〜7日ほどかかります。生や加熱が不十分な鶏肉は代表的な感染源の一つです。
そのため診察では、昨日の食事だけではなく、数日前までさかのぼって話を聞くことがあります。
鶏刺しや鶏のたたきを食べた、バーベキューをした、一緒に食事をした家族や友人にも同じような症状が出ている。こうした情報が診断の手がかりになることがあります。
受診するときには、直前の食事だけでなく、ここ数日で何を食べたかを少し思い出しておいてもらえると助かります。
血便や強い腹痛があるときは、少し話が変わります
実際の外来では、水様便や嘔吐で来院される方が多く、血便まで出ている方は少数です。
だからこそ、血が混じっている場合は少し注意して見ています。
血便に腹痛や発熱を伴う場合には、細菌による腸炎などを考えることがあります。
また、強い腹痛が続く場合には、「下痢があるから胃腸炎だろう」と決めつけないことも大切です。虫垂炎や大腸憩室炎など、別の病気で下痢を伴うこともあります。
水分が取れない、血便がある、腹痛がかなり強い、高い熱が続く、症状がどんどん悪くなっている。
このような場合には、早めの受診を考えてください。
高齢の方や小さなお子さん、持病のある方などは、脱水や感染症の影響を受けやすいこともあるため、同じ症状でも早めに診察した方がよい場合があります。
抗菌薬は「念のため」に飲む薬ではありません
「食中毒なら抗菌薬を飲んだ方が早く治るのでは?」と思われることがあります。
ただ、急性下痢症の多くは、水分を取りながら対症療法で経過を見ることが基本です。健常な方の軽症の細菌性腸炎が疑われる場合でも、抗菌薬を使わずに経過を見ることがあります。
一方で、全身状態や年齢、基礎疾患、症状の程度、原因として考えられる病原体などによっては、抗菌薬を検討することもあります。
以前処方された抗菌薬が家に残っていても、自己判断で飲むのは避けてください。
市販の下痢止めについても、血便や強い腹痛、発熱があるときには、「とりあえず止めておこう」と自己判断するより、一度診察を受けた方がよいでしょう。
夏の下痢や嘔吐で、私がまず見ているのは水分が取れているかです。
飲めていて、症状が軽く、少しずつ良くなっているなら、慌てなくてもよいことがあります。
一方で、水分が取れない、血便が出る、腹痛が強い、全身状態が悪くなっている。こういうときは、我慢せず受診してください。
そして「昨日食べたものが悪かったかな」と思っても、原因となった食事が数日前だったということもあります。
症状が始まった時期とあわせて、ここ数日の食事や、一緒に食べた人にも同じ症状が出ていないかを確認しておくと、診察の参考になります。